父の死、ある石工との出会い
建築デザイナーになるという夢を叶える為に、家族の元を離れ東京の美大に通う鈴木翔太は、父親の葬儀をきっかけに数年ぶりに故郷へ帰ることになった。彼が生まれ育ったのは香川県高松市にある庵治町(あじちょう)という小さな町。この町は日本三大花崗岩の一つとして知られる「庵治石(あじいし)」の産地であり、翔太の父親も「庵治石」の石工(石職人)だった。
父親の葬儀の後、近所の山間を散歩していると場所がら聞こえてくるはずのない「石を叩く音」が聞こえてくる。その音につられ山に入って行くと古びた小屋の中で黙々と石を掘り続ける石工、田島源次郎に出会う。
石工修行、『庵治石』が通した交流
翔太は源次郎が作る作品に心打たれ、さらに小屋の中に飾られた「あるもの」を見つけ、夏休みの間だけ石工として修行させてくれと申し出る。最初は翔太の申し出を断る源次郎であったが、娘であり翔太の同級生でもある結維からも懇願され、結果翔太の弟子入りを認めてしまう。
世代も価値観も全く違う二人が石を通して交流を始めるのだが、その頑固さ故に町の石工たちからも疎外された源次郎が、軽い気持ちで石工の真似事をしようとする翔太に心を開く事はなかった。ある「事件」が起きるまでは…。
人と人とを繋ぐ 絆の尊さ
400年以上続く庵治石の伝統を、教える側と教わる側、それは一朝一夕で交わる事のない師弟の関係を中心に、家族や恋人、友人との絆から、先祖、子孫との「絆の尊さ(それを「紲」という字で表しています)」までを、日本の原風景が多く残る高松の印象的な景色を交えながら、丹念に描いた人間ドラマです。
